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ストーマ(人工肛門・人工膀胱)で障害年金を請求(申請)するポイントとは

ストーマ(人工肛門・人工膀胱)で障害年金を請求(申請)するポイントとは

病気や負傷のため、手術により主に腹壁につくられた排泄口のことストーマと言います。

ストーマには、消化管の一部を便の排泄口として腹壁に造設する消化器ストーマ(人工肛門)と、尿の排泄口として尿管を直接腹壁に出したり、切断した腸管を使って新たな尿路を造設して尿の排泄口を造設する尿路ストーマ(人工膀胱・ウロストミー)があります。

ストーマを保有している人のことを「オストメイト」と呼び、そのような方が一定の基準を満たせば障害年金を受給することができます。

今回はストーマで障害年金を請求する際のポイントをご説明いたします。

人工肛門又は新膀胱(人工膀胱)を造設している場合の障害年金について

人工肛門又は新膀胱(人工膀胱)を造設している場合、原則として障害年金の3級に認定されます。
詳しい基準をご説明する前に、まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金について

「障害年金」とは、病気やケガにより、日常生活や仕事に支障が出る場合に請求し、受給することができるものです。

これは国から支給される年金で、老齢年金などと同じ公的保障の1つですので、所定の要件を満たせば誰もが受給することができます。

原則として、20歳から65歳誕生日の前々日までに請求しなければならなりませんので注意が必要です。

障害年金には、「障害基礎年金」「障害厚生年金」といったの2種類の年金があり、初診日に国民年金に加入していた方(自営業者・専業主婦・学生など)は「障害基礎年金」、初診日に厚生年金に加入していた方(会社勤務・公務員など)は「障害厚生年金」が受給対象になります。

「障害基礎年金」は、障害の程度に応じて等級は1級と2級の2区分に分けられます。
「障害厚生年金」は、障害の程度に応じて等級は1級~3級の3区分に分けられます。また3級に該当しない場合も「障害手当金」という一時金が受給できる場合があります。

障害年金を受給するには、病気やケガの状態に関する要件だけでなく、公的年金への加入状況(保険料納付状況)に関する要件が設定されています。実際に障害年の請求手続きをする際に慌てることがないよう、以下に受給要件に関する説明をしますので必ず確認しておきましょう。

障害年金を受給するための3つの要件

病気やケガを理由に障害年金を請求するとき、以下の3つの要件を満たさなければ受給が認められれません。

①初診日要件
②障害認定日要件
③保険料納付要件

病気やケガをし、初めて医療機関を受診してから所定の日数が経過していなければ請求できない事は、案外知らない人が多いですので注意してください。

①初診日要件について

初診日とは、「障害の原因になった傷病につき、初めて医師もしくは歯科医師の診療を受けた日(その症状で初めて診療を受けた日)」のことです。

障害年金の受給には、以下のいずれかの条件(障害の原因となった病気やケガの初診日が次のいずれかの間にあること)に該当することが必要になってきます。

・国民年金加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰り上げ請求していない場合に限る)
・厚生年金保険の被保険者

障害年金が受給できるかは初診日を基準にして審査が行われるため、初診日の時点において加入していた年金制度によって請求できる障害年金の種類が変わってきます。先述しましたように、初診日とはその傷病で初めて医療機関を受診した日のことを言います。その症状で初めて診療を受けた日であり、傷病の確定診断が行われた日ではありませんので注意してください。

また、転移性がんの場合は原発がんについての初診日が障害年金請求上の初診日になります。

②障害認定日要件について

初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やケガが治った場合(症状が固定した場合)はその日を障害認定日(障害基礎年金の場合、障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)といいます。
この障害認定日に障害等級表に定める障害になっていることが要件となります。
そのため障害があってもすぐに障害年金を請求したり受給できるわけではなく、1年6カ月経過するか治って(症状が固定して)から請求する必要があります。

人工肛門又は新膀胱を造設している場合、例えば、初診日から1年6カ月以内に「人工肛門を増設した日から6カ月経過した日」や「新膀胱を造設した日」がある場合は、その日が障害認定日になります。

詳しくは下記の日本年金機構のページをご覧ください。

引用コンテンツ:障害認定日


引用元:日本年金機構詳しくはこちらへ


※また、障害認定日の時に法令に定める障害の状態に該当しなかった方でも、その後症状が悪化し、法令に定める障害の状態になったときは事後重症という形で請求ができます。ただし、65歳の誕生日の前々日までに請求しなければなりません。

③保険料納付要件について

障害年金を受給するためには、保険料の納付期間も大きなポイントであり、以下の要件を満たさなければなりません。

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は不要です。

ストーマ(人工肛門・新膀胱)の認定基準とは

障害認定基準では、人工肛門または新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施したものは原則3級に認定するとされています。

冒頭でご説明した通り、障害年金には2種類の年金があり、初診日に国民年金に加入していた方(自営業者・専業主婦・学生など)は「障害基礎年金」、初診日に厚生年金に加入していた方(会社勤務・公務員など)は「障害厚生年金」が対象になります。

「障害基礎年金」は、障害の程度に応じて等級は1級と2級の2区分に分けられ、「障害厚生年金」は、障害の程度に応じて等級は1級~3級の3区分に分けられるため、人工肛門または新膀胱造設、尿路変更術についての初診日に厚生年金加入の場合は、所定の要件さえ満たしていれば障害年金を受給することができますが、初診日に国民年金加入の場合は3級では障害年金が支給されません。

ただ、人工肛門または新膀胱造設、尿路変更術を施した方でも2級以上に該当する場合がありますので、下記をご確認ください。

人工肛門または新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施した場合

障害認定基準では、「人工肛門または新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施したものは3級に認定する。」とされていますが、「全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定する。」とも記載されています。

ですから、人工肛門などの人工臓器が上手く機能していない場合や、例えば、がんが原因で人工臓器造設を行った場合で、がんの転移があったり、抗がん剤治療の副作用があり全身の衰弱や倦怠感がある場合は、総合的に判断され2級以上に認定される可能性があります。

そのような場合は、医師に診断書を作成してもらう時に、検査結果、治療の内容・その副作用、自覚症状などを具体的に細かく記載してもらいましょう。

がんが原因で人工肛門などの人工臓器造設を行った方はこちらの記事もご参照ください。

人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合又は尿路変更術を施した場合

・人工肛門造設+新膀胱造設の場合
・人工肛門造設+尿路変更術を施した場合
は原則として2級に認定されます。

※全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定される場合もあります。

人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にある場合

・人工肛門造設+完全排尿障害(カテーテル留置または自己導尿の常時施行を必要とする)状態にある場合
は原則として2級に認定されます。

※全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定される場合もあります。

診断書の種類と記載ポイント

人工肛門や新膀胱造設、尿路変更術を施した場合の障害年金請求用の診断書は、「血液・造血器・その他の障害用の診断書(第120号の7)」を使用します。


引用コンテンツ:血液・造血器・その他の障害用の診断書(第120号の7)


引用元:日本年金機構診断書はこちらへ


医師に診断書を作成してもらう時には、項番⑨「現在までの治療の内容、反応、期間、経過、その他の参考となる事項」手術歴の欄に手術名・手術年月日や、項番⑮「その他の障害」3.人工臓器等の欄に人工臓器増設日やカテーテル留置または自己導尿の常時施行の開始日を必ず記入してもらいます。

また、先述しましたが、人工肛門などの人工臓器が上手く機能していない場合や、がんが原因で人工臓器造設を行った場合で、がんの転移があったり、抗がん剤治療の副作用があり全身の衰弱や倦怠感がある場合は、総合的に判断され2級以上に認定される可能性がありますので、そのような場合は、医師に診断書を作成してもらう時に、検査結果、治療の内容・その副作用、自覚症状などを具体的に細かく記載してもらいましょう。

がんが原因で人工臓器造設などを行った方はこちらの記事もご参照ください。

癌(がん)で障害年金を請求(申請)する際のポイント

人工肛門などの人工臓器増設を行った場合の請求のポイント

「障害年金を受給するための3つの要件」の「②障害認定日要件について」でも説明いたしましたが、初診日から1年6カ月を経過した日、または1年6カ月以内にその病気やケガが治った場合(症状が固定した場合)、その日を障害認定日といい、障害認定日に障害等級表に定める障害になっているか、障害認定日後に障害等級表に定める障害になっているときは事後重症という形で障害年金が請求できます(ただし、65歳の誕生日の前々日までに請求しなければなりません。)。
つまり、障害認定日後でないと障害年金は請求できません。

人工肛門などの人工臓器増設を行った場合は、障害認定日の特例があり、初診日から1年6カ月を経過しなくても請求できますので下記をご確認ください。

人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合

人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合は、造設または手術を施した日から起算して6カ月を経過した日が障害認定日となりますので、初診日から1年6カ月が経過していなくも、障害認定日後に障害年金を請求することができます。

※初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除きます。

新膀胱を造設した場合

新膀胱を造設した場合は、造設した日が障害認定日となりますので、初診日から1年6カ月が経過していなくも、障害認定日後に障害年金を請求することができます。

※初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除きます。

人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した場合

人工肛門造設+新膀胱造設の場合は、人工肛門を造設した日から起算して6カ月を経過した日又は新膀胱を造設した日のいずれか遅い日が障害認定日となりますので、初診日から1年6カ月が経過していなくも、障害認定日後に障害年金を請求することができます。

※初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除きます。

人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した場合

人工肛門造設+尿路変更術を施した場合は、それらを行った日のいずれか遅い日から起算して6カ月を経過した日が障害認定日となりますので、初診日から1年6カ月が経過していなくも、障害認定日後に障害年金を請求することができます。

※初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除きます。

人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態にある場合

人工肛門造設+完全排尿障害状態にある場合は、人工肛門を造設した日又は完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6カ月を経過した日が障害認定日となりますので、初診日から1年6カ月が経過していなくも、障害認定日後に障害年金を請求することができます。

※初診日から起算して1年6カ月を超える場合を除きます。

ストーマと就労の関係

「働いているので障害年金は受給できないのではないか」と思われる方もいらっしゃると思います。

たしかに、障害年金の対象となる障害の種類によっては、就労を行っている場合には受給が難しくなることもあります。

しかし、人工肛門などの人工臓器造設をされている場合、就労を行っていることは特に問題とされていませんので、フルタイムで働いていても障害年金を受給することが可能です。

今回のまとめ

今回はストーマで障害年金を請求する際のポイントをご説明いたしました。

ストーマで障害年金を請求する場合には、診断書に手術歴や人工臓器等の項目に記載されているか必ず確認してください。

また、障害認定日には特例があります。初診日から1年6カ月経たないうちに人工肛門・新膀胱を増設した時は、「増設日から6ケ月経過した日」が障害認定日となり、1年6カ月待たなくても請求できる場合がありますので、お気を付けください。


もし、ご自身で請求手続きが難しいと思われる場合は社会保険労務士(社労士)に依頼するという方法もあります。

社労士とは年金の専門家であり、障害年金に必要な書類の準備・作成・請求手続きをしたり、不支給の決定がされた場合に不服申し立ての手続きをするなど様々なサポートを受けることができます。

多くの社労士は初回無料相談を行っていますので、利用してみてください。

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