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アルコール依存症になった際に、障害年金をもらうための重要なポイントとは?

アルコール依存症になった際に、障害年金をもらうための重要なポイントとは?

アルコール依存症だけでは障害年金の対象外になりますが、精神病性障害や身体症状がある場合、障害年金受給の可能性があります。今回の記事で説明するのは、障害年金の受給条件や請求に必要な書類の作成方法などです。もし、今回の記事をご覧になり、基準を満たしているということであれば障害年金の請求を検討してください。

アルコール依存症によって障害年金がもらえる場合とは

アルコール依存症とは、お酒を長い期間にわたり大量に摂取し続けることによって、お酒を摂取しないといられなくなる状態に陥る病気です。

アルコール依存症による症状も障害年金の対象疾患とされていますが、精神病性障害を示さない単なる急性アルコール中毒や、体の震え、幻聴、幻覚などの身体症状が無い場合は、障害年金の認定の対象になりません。

アルコール依存症による精神病性障害や身体症状があり、日常生活や労働に支障が出ているのであれば、障害年金の請求を検討しましょう。

障害年金を受給するための2つの条件

障害年金受給の条件として、①障害の状態が認定基準に該当する状態であること、②初診日までの一定期間に年金の保険料を納付していること、の2つの条件があり、両方とも満たしていなければなりません。

まずは認定基準から見ていきます。

認定基準に当てはまるかどうか

障害年金には認定基準というものがあり、傷病により「これぐらいの障害の程度の場合は何級相当」と基準が定められています。

大まかに言うと、常に誰かの介助を受けなければ日常生活が送れない場合が1級、日常生活や労働に支障が出ている場合が2級、労働に制限がある場合は3級、傷病が治り労働に制限がある場合は障害手当金です。

なお精神の障害についての新たな審査の基準として、認定基準をより具体的に示した「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が策定され、平成28年9月から実施されています。

このガイドラインでは、精神の障害用診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の評価及び「日常生活能力の程度」の評価によりどの障害等級に相当するのかの目安が示されています。

日常生活能力の判定について

精神の障害用診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」とは、日常生活の7つの場面における制限度合いをそれぞれ具体的に評価したものです。
※請求者が単身で生活をした場合、可能かどうかで判断することになっています。

①適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど
②身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど
③金銭管理と買い物 金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど
④通院と服薬 規則的にに通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど
⑤他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど
⑥身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど
⑦社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続が行えるなど

これらの各項目が下記のいずれに該当するか

▢ できる
▢ 自発的にできるが(又はおおむねできるが)時には助言や指導を必要とする
▢ (自発的かつ適正に行うことはできないが)助言や指導があればできる
▢ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

日常生活能力の程度について

精神の障害用診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」とは、「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合いを包括的に評価したものです。

下記の5つの選択肢から症状にもっとも近いものを選びます。

①精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
②精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
③精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
④精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
⑤精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

初診日までの一定期間に年金の保険料を納付している

条件の2つ目は、年金の保険料納付に関する条件(納付要件)になります。その傷病(アルコール依存症)のために初めて医師の診療を受けた日(初診日)までの一定期間、年金の保険料を納めていなければなりませんが、その確認はお近くの年金事務所や街角の年金相談センターでできます。

条件は以下の通りです。

初診日が次のいずれかの間にあり
・国民年金、厚生年金、共済年金に加入していた期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間


①初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること(原則)

あるいは

②初診日において65歳未満の場合、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(特例)

①あるいは②のどちらかの条件を満たしていれば、納付要件はクリアします。

審査で大事な2つの書類

つづきまして障害年金の請求をする準備にあたって、書類の作成方法についてご説明いたします。

診断書について

診断書は障害年金を請求するにあたり、一番重要な書類となります。

先述しました認定基準にありますように、障害年金においては、傷病により「これぐらいの障害の程度の場合は何級相当」と基準が定められています。そして、等級判定ガイドラインでは、診断書の記載事項(「日常生活能力の判定」の評価及び「日常生活能力の程度」の評価)を基にして等級の目安が定められています。

よって、障害年金の受給はほとんど診断書の内容で決定されると言っても過言ではないでしょう。

アルコール依存症で障害年金を請求する場合は「診断書(精神の障害用)様式第120号の4」を使用します。

診断書の作成について

アルコール依存症の等級判定については、先述の日常生活能力の判定と程度が重視されていますが、受診時に主治医から日常生活状況を細かく聴かれることもないでしょうし、こちらから主治医に日常生活状況を伝えきれている方はほとんどいらっしゃらないと思われます。
主治医がそのことを十分理解していない場合、実際の症状が診断書の内容に反映されず、障害年金が不支給という結果になってしまう可能性もありえます。

そのため、普段どのような症状があり、日常生活や労働にどのような影響が出ているかを主治医に伝え、症状に応じた診断書を書いてもらうことが重要になってきます。
ですから、診断書の作成を依頼する前に、事前に日常生活のどんな部分に支障があり、どんなことに困っているのかといった日常生活状況をまとめおき病院へ持参のがいいでしょう。

病歴・就労状況等申立書について

病歴・就労状況等申立書という書類は、発病から現在までの経過(日常生活状況や就労状況など)を記載するもので、診断書のように医師が作成するものではなく、請求者自らが作成するものです。

病歴・就労状況等申立書は日常生活にどのような支障が出ているのか、どのようなことに困っているかについて自ら伝えることができる唯一の書類であるため、どう書いていいかわからないということで簡単に書いてしまわないようにしましょう。

医師が作成する診断書では伝えきれない日常生活や就労状況を伝えることのできる重要な書類なので、ポイントをおさえながらしっかり記載することが重要となってきます。

病歴・就労状況等申立書の作成について

①発病したときから現在までの経過を3年から5年に分けて記載
病歴・就労状況等申立書は発病したときから現在までの通院した医療機関や日常生活状況、就労状況を、年月順に期間を空けずに記載しなければなりません。
同一の医療機関を長期間受診している場合や医療機関を長期間受診していなかった場合は、その期間を3年から5年ごとに区切ります。また、医療機関を転院した場合には、医療機関ごとに記入欄を区切り、その理由や目的なども記入が必要となります。
10年などまとめて書いてしまうと日本年金機構(年金事務所など)から書き直しを求められることがあります。必ず3年から5年の期間に区切って作成するようにしましょう。

②客観的かつ具体的に記載
病歴・就労状況申立書は客観的かつ具体的に記入することが重要になってくるため、自分がどう思ったとか感じたかではなく、実際にどんなことがあったかといったエピソードを具体的に記入するようにしましょう。

例えば、「何年何月(頃)、(アルコール依存症特有の)~といった症状があり、(今まで出来ていた日常生活の)~といったことが出来なくなった。(普段ならしないような)~のようなことをしてしまった。(家族が)~といった援助をしてくれた。」など。

③診断書と病歴・就労状況等申立書の整合性に注意
医師が作成した診断書と請求者が作成した病歴・就労状況等申立書の整合性が障害年金の審査においては重視されます。
例えば、診断書には過去に〇年3月から10月まで△△病院へ通院と記載されているにも関わらず、病歴・就労状況等申立書にはその期間は違う病院に通院していたことを書くと、書類内容の信憑性を疑われる可能性がありますし、また、診断書には「(症状があり)~はできない」と記載されているのに、病歴・就労状況申立書に「~はできる」と書いた場合、病歴・就労状況等申立書の記載内容が影響し、適切な等級に認定されない可能性も出てきます。
ですから、まずは診断書に記載されている内容をよく読み、診断書の内容と矛盾しないように気を付けながら病歴・就労状況等申立書の作成を行っていきましょう。
もし、診断書の記載に主要な事実関係などが抜けているところがあるのであれば、医師に診断書の訂正の依頼をすることになります。しかし、医師が訂正に応じてくれないこともありますので、そういった場合には、診断書の内容を踏まえながら、病歴・就労状況等申立書の中で、診断書では省かれている細かい内容について、自分で必要な文章や言葉を付け加えていったりします。
病歴・就労状況等申立書は、基本的にご本人が記入するものですが、ご家族などに代筆を頼むことも可能です。アルコール依存症の方の場合、なかなかご本人が書くのは難しいということも多いのではないでしょうか。
その場合、自分の家族のできないことばかり書くことになるため気がすすまないかもしれないのですが、障害年金請求のために客観性を意識して書くようにしてください。
書類が書きあがりましたら、書類を提出する前にもう一度医師の作成した診断書と病歴・就労状況等申立書を見比べていただき、記載内容に矛盾がないかを確認しましょう。

今回のまとめ

今回はアルコール依存症を取り上げ、障害年金受給の条件について解説しました。
アルコール依存症は、精神病性障害を示さない身体症状が無い場合は、障害年金の認定の対象になりません。
そのような症状を示されている場合は障害年金の受給の可能性がありますので、早めに請求の準備を始めてください。

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