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人工骨頭・人工関節で障害年金を請求(申請)するポイントとは

人工骨頭・人工関節で障害年金を請求(申請)するポイントとは

病気やケガにより労働できなくなり、生活に困った場合に受給できる年金として「障害年金」というものがあります。人工骨頭・人工関節をそう入置換された方も障害年金の対象となります。

この記事では、人工骨頭・人工関節で障害年金を請求する場合のポイントについて解説していきます。

人工骨頭・人工関節をそう入置換された方の障害年金について

人工骨頭・人工関節をそう入置換された方の場合、原則として障害年金の3級に認定されます。
詳しい基準をご説明する前に、まず、障害年金の制度について簡単にご説明します。

障害年金について

「障害年金」とは、病気やケガにより、日常生活や仕事に支障が出る場合に請求し、受給することができるものです。

これは国から支給される年金で、老齢年金などと同じ公的保障の1つですので、所定の要件を満たせば誰もが受給することができます。

原則として、20歳から65歳誕生日の前々日までに請求しなければならなりませんので注意が必要です。

障害年金には、「障害基礎年金」「障害厚生年金」といったの2種類の年金があります。

初診日(障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)に国民年金に加入していた方(自営業者・専業主婦・学生など)や20歳前だった方、または60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)だった方は「障害基礎年金」が受給対象になります。
※20歳前に初診日がある方の「障害基礎年金」には年金の支給に関して制限や調整があります(所得による支給制限など)。

初診日に厚生年金に加入していた方(会社勤務・公務員など)は「障害厚生年金」が受給対象になります。


「障害基礎年金」は、障害の程度に応じて等級は1級と2級の2区分に分けられます。
「障害厚生年金」は、障害の程度に応じて等級は1級~3級の3区分に分けられます。また3級に該当しない場合も「障害手当金」という一時金が受給できる場合があります。

障害年金を受給するには、病気やケガの状態に関する要件だけでなく、公的年金への加入状況(保険料納付状況)に関する要件が設定されています。実際に障害年の請求手続きをする際に慌てることがないよう、以下に受給要件に関する説明をしますので必ず確認しておきましょう。

障害年金を受給するための3つの要件

病気やケガを理由に障害年金を請求するとき、以下の3つの要件を満たさなければ受給が認められれません。

①初診日要件
②障害認定日要件
③保険料納付要件

病気やケガをし、初めて医療機関を受診してから所定の日数が経過していなければ請求できない事は、案外知らない人が多いですので注意してください。

①初診日要件について

初診日とは、「障害の原因になった傷病につき、初めて医師もしくは歯科医師の診療を受けた日(その症状で初めて診療を受けた日)」のことです。

障害年金の受給には、以下のいずれかの条件(障害の原因となった病気やケガの初診日が次のいずれかの間にあること)に該当することが必要になってきます。

・国民年金加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰り上げ請求していない場合に限る)
・厚生年金保険の被保険者

障害年金が受給できるかは初診日を基準にして審査が行われるため、初診日の時点において加入していた年金制度によって請求できる障害年金の種類が変わってきます。
先述しましたように、初診日とはその傷病で初めて医療機関を受診した日のことを言います。その症状で初めて診療を受けた日であり、傷病の確定診断が行われた日ではありませんので注意してください。

②障害認定日要件について

初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やケガが治った場合(症状が固定した場合)はその日を障害認定日(障害基礎年金の場合、障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)といいます。
この障害認定日に障害等級表に定める障害になっていることが要件となります。
そのため障害があってもすぐに障害年金を請求したり受給できるわけではなく、1年6カ月経過するか治って(症状が固定して)から請求する必要があります。

人工骨頭・人工関節をそう入置換された方の場合には特例があり、例えば、初診日から1年6カ月以内に「人工骨頭・人工関節をそう入置換された日」があるときは、そう入置換した日が障害認定日になります。

詳しくは下記の日本年金機構のページをご覧ください。

引用コンテンツ:障害認定日


引用元:日本年金機構詳しくはこちらへ


※また、障害認定日の時に法令に定める障害の状態に該当しなかった方でも、その後症状が悪化し、法令に定める障害の状態になったときは事後重症という形で請求ができます。ただし、65歳の誕生日の前々日までに請求しなければなりません。

③保険料納付要件について

障害年金を受給するためには、保険料の納付期間も大きなポイントであり、以下の要件を満たさなければなりません。

【保険料納付要件の原則】
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

つまり、原則、20歳に到達した月から初診日の前々月までの期間に、3分の2以上の保険料を納めているか免除されていなければなりません。

ただし、保険料納付要件には特例があり、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっていますので、過去に保険料の未納期間が多かった方でも障害年金を受給できる可能性があります(初診日が令和8年4月1日前にある場合に限る)。

保険料納付要件の原則及び特例は「初診日の前日」において保険料が納付されていたかで見ますので、初診日の後に保険料が納付されてもカウントされません。


また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は不要です。

障害年金の受給額

障害年金で受給できる金額は初診日に加入していた年金制度の種類や障害等級によって変わってきます。また配偶者や子どもがいる場合はそれぞれ一定額が加算される場合があります。
年金額は年度によって改定されます。以下に金額を記載します。

【障害基礎年金の年額(令和4年度)。1級と2級があり、金額は固定です。】
1級:97万2,250円(2級の1.25倍)+子の加算額※
2級:77万7,800円+子の加算額※

※子の加算額は一人につき22万3,800円加算されます(3人目以降の子は7万4,600円加算)
※子の加算額はその方に生計を維持されている子がいるときに加算されます。
なお、子とは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子です。



【障害厚生年金の年額(令和3年度)。1級~3級があります。1級または2級に該当した方は、原則として、同じ等級の障害基礎年金も支給されます。】
1級:報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額※
2級:報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額※
3級:報酬比例の年金額(最低保証額:58万3,400円)

※配偶者の加給年金額は年額22万3,800円が加算されます。
※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者(年収850万円未満または所得額655万5,000円未満)がいるときに加算されます。
※配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。

人工骨頭・人工関節の認定基準とは

障害認定基準では、「一上肢の 3 大関節中 1 関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両上肢の 3 大関節中 1 関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは 3 級と認定する。」
「一下肢の 3 大関節中 1 関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の 3 大関節中 1 関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは 3 級と認定する。」
とされており、人工骨頭・人工関節をそう入置換したものは原則3級に認定するとされています。

冒頭でご説明した通り、障害年金には2種類の年金があり、初診日に国民年金に加入していた方(自営業者・専業主婦・学生など)は「障害基礎年金」、初診日に厚生年金に加入していた方(会社勤務・公務員など)は「障害厚生年金」が対象になります。

「障害基礎年金」は、障害の程度に応じて等級は1級と2級の2区分に分けられ、「障害厚生年金」は、障害の程度に応じて等級は1級~3級の3区分に分けられるため、人工骨頭又は人工関節のそう入置換について、その症状で初めて診療を受けた日(初診日)に厚生年金加入の場合は、所定の要件さえ満たしていれば障害年金を受給することができますが、初診日に国民年金加入の場合は3級では障害年金が支給されません。

ただ、人工骨頭又は人工関節をそう入置換された方でも2級以上に該当する場合がありますので、下記をご確認ください。

人工骨頭・人工関節で2級以上になる場合

障害認定基準では、人工骨頭・人工関節をそう入置換したものは原則3級に認定するとされていますが、「そう入置換してもなお、一上肢については『一上肢の用を 全く廃したもの』程度以上に該当するとき、両上肢については『両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの』程度以上に該当するときは、 さらに上位等級に認定する。
「そう入置換してもなお、一下肢については『一下肢の用を 全く廃したもの』程度以上に該当するとき、両下肢については『両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの』程度以上に該当するときは、 さらに上位等級に認定する。」とされています。

ですから、一上肢や一下肢が「用を 全く廃したもの」程度以上に該当したり、両上肢や両下肢が「機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、2級以上に認定される可能性があります。
それでは、「用を 全く廃したもの」や「機能に相当程度の障害を残すもの」とはどういった状態なのかをご説明いたします。

「用を 全く廃したもの」とは

「一上肢の用を 全く廃したもの」とは、一上肢の3大関節中(肩、肘、手)いずれか2関節以上の関節が 全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものを いいます。
(ア) 不良肢位で強直しているもの(例えば、肘が曲がった状態で動かない。)
(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、 かつ、筋力が半減しているもの(「他動可動域」とは施術者が他動的に患者の関節を動かしたときの可動域、「健側」は障害のない側です。)
(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの


「一下肢の用を 全く廃したもの」とは、一下肢の 3 大関節中(股、膝、足)いずれか 2 関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものを いいます。
(ア) 不良肢位で強直しているもの(例えば、膝が曲がった状態で動かない。)
(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の 2 分の 1 以下に制限され、 かつ、筋力が半減しているもの(「他動可動域」とは施術者が他動的に患者の関節を動かしたときの可動域、「健側」は障害のない側です。)
(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

※ただし、「膝関節のみが 100 度屈曲位の強直である場合のように単に 『1 関節の用を全く廃するにすぎない場合』であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、『一下肢の用を全く廃したもの』と 認定する。」とされています。

「機能に相当程度の障害を残すもの」とは

両上肢の機能に相当程度の障害を残すものとは(例えば、両上肢の3大関節中(肩、肘、手)それぞれ1関節の他動可動域が、※「肢体の障害関係の 測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が 半減しているもの)をいいます。
なお、認定に当たっては、「一上肢のみに障害がある場合に比して日常 生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。」とされています。

両下肢の機能に相当程度の障害を残すものとは(例えば、両下肢の 3 大関節中(股、膝、足)それぞれ 1 関節の他動可動域が、※「肢体の障害関係の 測定方法」による参考可動域の 2 分の 1 以下に制限され、かつ、筋力が 半減しているもの)をいいます。

なお、認定に当たっては、「一下肢のみに障害がある場合に比して日常 生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。」とされています。

※「肢体の障害関係の 測定方法」による参考可動域については下記の日本年金機構のページをご覧ください。

引用コンテンツ:肢体の障害関係の 測定方法


引用元:日本年金機構詳しくはこちらへ


例えば、肘関節が参考可動域の 2 分の 1 以下に制限されているかを見る場合、「肢体の障害関係の 測定方法」p.45 部位名「肘」運動方向「屈曲」の参考可動域角度は145度、「伸展」の参考可動域角度は5度です。肘関節の可動域(屈曲と伸展)が、(145度+5度である150度の2 分の 1である)75度以下に制限されているかを見ます。

診断書の種類と記載ポイント

人工骨頭又は人工関節をそう入置換した場合の障害年金請求用の診断書は、「肢体の障害用診断書(第120号の3)」を使用します。


引用コンテンツ:肢体の障害用診断書(第120号の3)


引用元:日本年金機構肢体の障害用診断書はこちらへ


医師に診断書を作成してもらう時には、項番⑬「人工骨頭・人工関節の装着の状態」に部位と手術年月日を必ず記入してもらいます。

また、先述しましたが、一上肢や一下肢が「用を 全く廃したもの」程度以上に該当したり、両上肢や両下肢が「機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、2級以上に認定される可能性がありますので、医師に診断書を作成してもらう時に、関節可動域や筋力などを記載してもらいましょう。

人工骨頭・人工関節と就労の関係

「働いているので障害年金は受給できないのではないか」と思われる方もいらっしゃると思います。

たしかに、障害年金の対象となる障害の種類によっては、就労を行っている場合には受給が難しくなることもあります。

しかし、人工骨頭・人工関節を挿入置換されている場合、就労を行っていることは特に問題とされていませんので、フルタイムで働いていても障害年金を受給することが可能です。

今回のまとめ

今回は人工骨頭・人工関節で障害年金を請求する際のポイントをご説明いたしました。

人工骨頭・人工関節で障害年金を請求する場合には、診断書に人工骨頭・人工関節の部位と手術年月日が記載されているか必ず確認してください。

また、障害認定日には特例があります。初診日から1年6カ月経たないうちに人工骨頭・人工関節をそう入置換された時は、「そう入置換した日」が障害認定日となり、1年6カ月待たなくても請求できる場合がありますので、お気を付けください。


もし、ご自身で請求手続きが難しいと思われる場合は社会保険労務士(社労士)に依頼するという方法もあります。

社労士とは年金の専門家であり、障害年金に必要な書類の準備・作成・請求手続きをしたり、不支給の決定がされた場合に不服申し立ての手続きをするなど様々なサポートを受けることができます。

多くの社労士は初回無料相談を行っていますので、利用してみてください。

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