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癌(がん)で障害年金を請求(申請)する際のポイント

病気やケガにより労働できなくなり、生活に困った場合に受給できる年金として「障害年金」というものがあります。癌(がん)による障害も障害年金の対象となります。

この記事では、がんで障害年金を請求する場合のポイントについて解説していきます。

がんでも障害年金を請求することができる

障害年金とは病気やケガが原因で日常生活や労働などに支障があるような障害をお持ちの方が受けることできる公的な年金です。

がんに罹患された方も日常生活や労働に支障がでている場合、障害年金を請求できます。

障害認定基準の認定要領には、悪性新生物(がん)による障害を以下のように区分しています。
ア 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生じる局所の障害
イ 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)による全身の衰弱又は機能の障害
ウ 悪性新生物に対する治療の効果として起こる全身衰弱又は機能の障害

ウにありますように、抗がん剤治療によって全身衰弱などがあり、日常生活や労働に支障がでている場合にも障害年金は認定の対象としています。

まず障害年金の制度から説明していきます。

障害年金について

「障害年金」とは、病気やケガにより、日常生活や仕事に支障が出る場合に請求し、受給することができるものです。

これは国から支給される年金で、老齢年金などと同じ公的保障の1つですので、所定の要件を満たせば誰もが受給することができます。

原則として、20歳から65歳誕生日の前々日までに請求しなければならなりませんので注意が必要です。

障害年金には、「障害基礎年金」「障害厚生年金」といったの2種類の年金があり、初診日に国民年金に加入していた方(自営業者・専業主婦・学生など)は「障害基礎年金」、初診日に厚生年金に加入していた方(会社勤務・公務員など)は「障害厚生年金」が受給対象になります。

「障害基礎年金」は、障害の程度に応じて等級は1級と2級の2区分に分けられます。
「障害厚生年金」は、障害の程度に応じて等級は1級~3級の3区分に分けられます。また3級に該当しない場合も「障害手当金」という一時金が受給できる場合があります。

障害年金を受給するには、病気やケガの状態に関する要件だけでなく、公的年金への加入状況(保険料納付状況)に関する要件が設定されています。実際に障害年の請求手続きをする際に慌てることがないよう、以下に受給要件に関する説明をしますので必ず確認しておきましょう。

障害年金を受給するための3つの要件

病気やケガを理由に障害年金を請求するとき、以下の3つの要件を満たさなければ受給が認められれません。

①初診日要件
②障害認定日要件
③保険料納付要件

病気やケガをし、初めて医療機関を受診してから所定の日数が経過していなければ請求できない事は、案外知らない人が多いですので注意してください。

①初診日要件について

初診日とは、「障害の原因になった傷病につき、初めて医師もしくは歯科医師の診療を受けた日(その症状で初めて診療を受けた日)」のことです。

障害年金の受給には、以下のいずれかの条件(障害の原因となった病気やケガの初診日が次のいずれかの間にあること)に該当することが必要になってきます。

・国民年金加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間(老齢基礎年金を繰り上げ請求していない場合に限る)
・厚生年金保険の被保険者

障害年金が受給できるかは初診日を基準にして審査が行われるため、初診日の時点において加入していた年金制度によって請求できる障害年金の種類が変わってきます。先述しましたように、初診日とはその傷病で初めて医療機関を受診した日のことを言います。その症状で初めて診療を受けた日であり、傷病の確定診断が行われた日ではありませんので注意してください。

また、転移性がんの場合は原発がんについての初診日が障害年金請求上の初診日になります。

②障害認定日要件について

初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やケガが治った場合(症状が固定した場合)はその日を障害認定日(障害基礎年金の場合、障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)といいます。
この障害認定日に障害等級表に定める障害になっていることが要件となります。
そのため障害があってもすぐに障害年金を請求したり受給できるわけではなく、1年6ヶ月経過するか治って(症状が固定して)から請求する必要があります。


がんの方の場合、例えば、初診日から1年6か月以内に「人口肛門を増設した日から6か月経過した日」や「咽頭全摘出した日」がある場合は、その日が障害認定日になります。

詳しくは下記の日本年金機構のページをご覧ください。

引用コンテンツ:障害認定日


引用元:日本年金機構詳しくはこちらへ


※また、障害認定日の時に法令に定める障害の状態に該当しなかった方でも、その後症状が悪化し、法令に定める障害の状態になったときは事後重症という形で請求ができます。ただし、65歳の誕生日の前々日までに請求しなければなりません。

③保険料納付要件について

障害年金を受給するためには、保険料の納付期間も大きなポイントであり、以下の要件を満たさなければなりません。

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は不要です。

がんの認定基準

悪性新生物(がん)による障害の程度は、障害認定基準において、

組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、

日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、

日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、

また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

とされています。

具体的には、診断書に一般状態区分表というものがあり、診断書作成時に医師がアからオのどの区分を選んだかが重視されます。
その他、診断書に記載された自覚症状や他覚所見、検査成績、病状の経過、日常生活状況などを参考にして総合的に認定されます。

下記に一般状態区分表と等級の目安を記載しましたので参考にしてください。

〈一般状態区分表〉
ア  無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

イ  軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  例えば、軽い家事、事務など

ウ  歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

エ  身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの イメージとしては労働不能状態

オ  身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの イメージとしては寝たきり状態


(等級の目安)
1級 一般状態区分表の「オ」
2級 一般状態区分表の「エ」または「ウ」
3級 一般状態区分表の「ウ」または「イ」

がんで障害年金を請求する際のポイント

障害年金を請求する際には医師が作成する「診断書」と請求者が作成する「病歴・就労状況等証明」の2枚の書類が重要になります。

以下に、がんで障害年金を請求する場合の書類作成ポイントを説明いたします。

医師に診断書を作成してもらう前に症状や状態を伝えておく

障害年金請求用診断書は症状別に分けられていますが、がん用の診断書はありません。
そのような場合、一般的には「その他の障害用の診断書」を使うことになっています。

「その他の障害用の診断書」はがん以外にも様々な疾患に対しても使用されるため、汎用性を持たせており、がんの審査をする際に必要な数値や症状の記載が指定されていません。

そのため、医師に診断書を作成してもらう時には、事前に記載してほしいことを伝えることが必要です。

そして、診断書の使える欄を活用してもらい、検査結果、治療の内容・その副作用、自覚症状などを具体的に細かく記載してもらいましょう。


例えば、以下のようなものを記載してもらってください。


●健康時・現在の体重(現在の体重が減少している場合、全身の衰弱を表します)

●自覚症状-倦怠感、全身衰弱、吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振、味覚喪失、貧血、発熱、身体の痛み(手術の痕など)、手足のしびれ、感覚鈍麻など

●検査成績-血液・生化学検査(診断書に記載されている検査項目に限定されずに医師が異常と思う検査項目があれば書き足してもらう)、腫瘍マーカーや組織診断検査等(血液・生化学検査以外の数値も医師が異常と思う検査項目があれば書き足してもらう)

●人工臓器-人工肛門増設や尿路変更術などを行った場合、手術日を記載してもらう

●治療の内容や副作用-放射線治療、抗がん剤治療、薬物療法などの治療方法について、治療期間やペース、投与量など

●現症時の日常生活活動能力及び労働能力-日常生活における支障や実際に労働できるのか

●予後(障害認定基準では「当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって」~とあります)

●その他-転移があれば転移について、手術歴など

※転移について記載してもらう際には、「原発がんによる転移であること。」を明確に記載してもらってください。もし、そのような明確な記載が無い場合、審査において、別々のがん(別々の傷病)であると認識されるかもしれません。そうしますと、今回請求の初診日が原発がんの初診日と違う日となり、初診日から1年6か月が経過していないため、そもそも障害年金の請求ができないということなどが起こる可能性があります。


これらのことを受診時に医師に話すか、文書にして渡す等して診断書の作成依頼をされるといいでしょう。

「その他の障害用の診断書」以外の診断書も検討する

先程も述べましたが、障害年金請求用診断書にがん用の診断書は無く、がんの場合「その他の障害用の診断書」を使うことが一般的です。

しかし、障害年金の審査は、病名の如何ではなく、原因となった傷病によってどのような症状が生じ、そのために日常生活や労働がどの程度制限されているのかで判断されますので、がんによって具体的に生じている症状から診断書を選択する必要があります。

冒頭に示しましたように障害認定基準の認定要領には、悪性新生物(がん)による障害を以下のように区分しています。

ア 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生じる局所の障害
イ 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)による全身の衰弱又は機能の障害
ウ 悪性新生物に対する治療の効果として起こる全身衰弱又は機能の障害

アは「局所の障害」となっています。
例えば、食道がんで食物の摂取が困難となった場合は、「そしゃく・嚥下機能の障害」という認定基準がありますので、「そしゃく・嚥下機能の障害用の診断書」の使用を検討します。

このような場合、「そしゃく・嚥下機能の障害用の診断書」を作成してもらうか、「その他の障害用の診断書」と「そしゃく・嚥下機能の障害用の診断書」の2枚を作成してもらいます。

がんは全身のほとんどの臓器に発生し、現れる病状は様々ですので、「その他の障害用の診断書」以外の診断書も検討してください。


以下に、がんの種類と診断書の種類を例示します。

食道がん、咽頭がん、舌がんーそしゃく・嚥下・言語機能の障害用診断書(第120号の2)
骨転移などによる上肢・下肢の障害-肢体の障害用診断書(第120号の3)
肺がんの場合-呼吸器疾患の障害用の診断書(第120号の5)
腎臓がん、肝臓がんー腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用診断書(第120号の6)
様々ながん(全身衰弱が主な症状である場合)-血液・造血器・その他の障害用の診断書(第120号の7)

発症後の状況について病歴・就労状況等申立書に具体的に記入する

病歴・就労状況等申立書は発病した時から現在までの経過を年月順に記入する書類です。
3年から5年に区切って期間をあけずに書きます。

請求者が審査側に主張する書類ですので、病歴や就労状況などについて具体的に記入しましょう。

受診していた期間については、その通院期間、受診回数(どのくらいの頻度で何回受診したか)、入院期間、治療経過(どんな治療をして、改善したかどうか)、医師から指示された事項、転医・受診中止の理由(治療方法を変えるため等)、日常生活状況(どのような症状があって日常生活でどんなことに困っていたのか等)、就労状況(仕事に制限はなかったか、会社から配慮してもらっていたこと等)を記入します。

受診していなかった期間については、その理由(経済的に行けなかった、医師と治療方針が合わなかった等)、自覚症状の程度(どんな症状がどの程度あったか)、就労状況(仕事に制限はなかったか、会社から配慮してもらっていたこと等)を記入します。

病歴・就労状況等申立書の作成は診断書の記載内容と矛盾がないか確認しながら行ってください。
例えば、病歴・就労状況等申立書に「○○の症状があるため日常生活の○○のような場面で困る」と書いても、診断書にその症状が書かれていないと、障害年金の審査ではその症状について認めてもらえない可能性があります。

そのようなことが無いように、医師に診断書作成依頼をするときは、自覚症状や日常生活における支障などをしっかり伝えておく必要があります。

今回のまとめ

障害年金はケガや病気などで働けなくなり収入がなくなったりして、日常生活に困った際に助けになる制度です。
がんに罹患された方も日常生活や労働に支障がでている場合、障害年金を請求できます。

障害年金を請求する際には「診断書」と「病歴・就労状況等証明」の2枚の書類が重要になりますので、今回の記事を参考にしていただいて作成してください。

もし、ご自身で作成が難しいと思われる場合は社会保険労務士(社労士)に依頼するという方法もあります。

社労士とは年金の専門家であり、障害年金に必要な書類の準備・作成・請求手続きをしたり、不支給の決定がされた場合に不服申し立ての手続きをするなど様々なサポートを受けることができます。

多くの社労士は初回無料相談を行っていますので、利用してみてください。

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